連載インターネット法務に精通した弁護士による「IT&仮想通貨に関する法律問題」の徹底解説【第3回】

金融庁も注意喚起・・・「ICO」に関する法規制の最新事情

今回は、「ICO」に関する法規制の最新事情を見ていきます。※本連載では、インターネット法務に精通した中野秀俊弁護士が「IT&仮想通貨に関する法律問題」を徹底解説します。

ICOの本格的な規制に乗り出した金融庁 <ICOの法律的な位置づけ>…

ICOの本格的な規制に乗り出した金融庁

<ICOの法律的な位置づけ>

 

ICOとは、Initial Coin Offeringの略称です。一般にICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称をいいます。つまり、企業からトークンを発行し、それに伴い一般の人からお金を集める仕組みをICOとされています。

 

ICOを直接規制した法律はありません。ですが、以下に述べるように金融庁からの実質的な規制が始まっています。

 

<金融庁からICOに関する注意喚起が発表に>

 

2017年10月27日、金融庁から、ICOに関して消費者及び事業者に対する注意喚起が出されました。

 

ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~

http://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/06.pdf

 

最近、ICOブームと呼ばれるように、様々な企業がICOを行うようになりましたが、資金集めるだけ集めて、その後連絡が取れなくなるという案件が増えてきたのも現実です。詐欺的なICOが増えている現状を踏まえ、金融庁もこのような注意喚起に踏み切ったのでしょう。

 

投資家としては、法律に違反するICOに投資してしまうと、資産価値がゼロになってしまう可能性もあります。そこで、ICOをめぐる法律的な環境について理解する必要があるのです。

 

<ICO事業者にとって注意すべき法律>

 

今回の金融庁からの注意喚起で、「事業者の方へ(ICOへの規制について)」という項目が記載されています。その中でICOについては、「ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となります」と書かれています。

 

まず、資金決済法の問題としては「ICOにおいて発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨に該当し、その交換等を業として行う事業者は内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になります」と記載されています。

 

トークンが法律上の仮想通貨に該当するかどうかは、本連載の第2回で詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。

 

<投資家の間で流行りの「トークン」・・・仮想通貨との違いは?>

 

簡単に言ってしまえば、当該トークンがどこかの仮想通貨取引所などに上場しているような場合には、法律上の「仮想通貨」となります。

 

もっとも、現状の金融庁の解釈としては、仮想通貨取引所などに上場しているような場合だけでなく、トークンの発行時点において、将来の国内又は海外の取引所への上場可能性を示唆しているような場合には、そのトークンは法律上の仮想通貨に該当する可能性が高いことになります。

 

そのような示唆が存在しない場合であっても、そのトークンの設計が既存の仮想通貨と交換できるような場合には、トークン発行した段階で仮想通貨に該当する可能性があります。

 

よって投資家としては、仮想通貨交換業の登録を受けていない業者が、「将来自社発行するトークンが上場します」といってICOをしている場合は、違法の可能性が高いです。この点は十分に注意しましょう。

ICOが「金融商品取引法」の規制対象となる場合も

<ICOはファンド規制(金融商品取引法)にも気を付ける>

 

上記に記載した金融庁の注意喚起では、「ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます」としています。

 

そもそも、金銭を出資し事業を行い、その利益から配当をするというのは、金融商品取引法上のファンド規制(集団投資スキーム規制)がかかります。よって、ICOとして金銭を出資してもらい、その後利益を分配するためには、金融商品取引法上の規制がかかる可能性があるのです。

 

もっとも、この金融商品取引法上のファンド規制(集団投資スキーム規制)というのは、金銭や有価証券を出資してもらう場合に適用されます。よって、仮想通貨で出資してもらう場合には、この金融商品取引法上のファンド規制は適用されないことになります。

 

ただし、今回の注意喚起で「実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象」という記載がなされました。

 

例えば、ICO事業者又はその関連業者が、出資者に対して事前に法定通貨から仮想通貨の交換をするとします。出資者がその仮想通貨を出資し、事業者がトークンを発行すると、実質的に「法定通貨での購入と同視されるスキーム」とされてしまい、ファンド規制がかかることになります。

 

<金融庁もICOに対する実質的な規制へ>

 

現在金融庁も、ICOを行う予定の事業者に対して、実質的な規制をかけています。金融庁は事業者に対し、事前に以下の資料を提出するように伝えています。

 

●ICOの詳細を記した資料(ホワイトペーパー等)

●金商法、資金決済法など既存法律への該当性に関する法的整理、検討など御社の見解

●資金調達を仮想通貨で実施する理由(仮想通貨を使用する必然性及び法定通貨で実施することが出来ない理由等)

●資金調達の目的、実現可能性

 

そして事業者は金融庁と面談をして、法律的に問題ないか確認を行う必要があります。そして、法律に抵触しないICOのみが実際に実行できるというわけです。

 

<投資家は、ICO事業者に、法律面及び金融庁へ相談済みか確認する>

 

少し前までは自由に行えたICOですが、現在では事情が一変しています。上記のように、法律面及び金融庁からの実質的な規制がかけられています。法律に違反したICOは、金融庁から事業者が業務停止等になる可能性もあり、価値がなくなる危険があります。

 

投資家としては、ICOに投資する前に、事業者に対して法律面及び金融庁への相談を行っているか、などの法律面に関する確認を行う必要があるのです。


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本記事は、2017年12月20日に『幻冬舎ゴールドオンライン』で掲載されたものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。